カードカウンティングの場合、リスクと報酬の両方を数学で精密に計算することができる。長期的なリスクを計算することで、そのリスクを管理することができるのだ。例えば、チャーチ・チームを運営していたとき、私たちは破産のリスク(ROR)、つまりバンクロールがゼロになる可能性を一番悪いときでも0.1%に抑えていた。こうすることで、非常に低リスクの投資を実現したのである。

また、プレイするゲームの価値を計算することで、ある程度正確に投資収益率を知ることができる。私がフルタイムでプレイしていたときは、1時間あたり200~400ドルの利益が見込まれるゲームを狙っていた。プロになってからの1時間あたりの収益率は432ドルを記録した。

ブラックジャックのプロを経験した人は皆、娯楽が目的ではないことを知っている。たしかに、スリルを感じるかもしれない。しかし実際は疲弊したり、退屈したり、イライラしたり、強いストレスを感じたり、ジェットコースターのような感情の起伏を経験したりする。そして、そのどれもが日常では体験しないものばかりである。それでもカードカウンターたちは、このような嵐を乗り越えていく。なぜなら、彼らは真面目な投資家であり、しつかりとした目標を見据えているからだ。それはつまり「長期的収益」である。

このようにカードカウンターは、ギャンブラーではなく投資家の思考を持ってテーブルに座っていることを理解していただけたかと思う。しかし、理解したところでそう簡単に実践できるものでもない。それどころか、カードカウンターとして正しいプレイを意識していても、無数に存在する誤解や破綻したロジック、無意識な要素によってギャンブラーと同じ思考に陥ってしまうことがある。

ここからの記事では、ギャンブラーの考え方の根底にある破綻したロジックについて詳しく見ていく。これがカジノにおいて最もよく見かける悲劇だといえるだろう。